最近ではマンション購入の際の仲介手数料を無料にしますという不動産会社があります。
仲介手数料無料のからくりについてはこちらの記事に書きました。
では、果たして本当に仲介手数料無料の不動産会社で購入すると得なのでしょうか?損する可能性はないのでしょうか?
仲介手数料無料のメリット
まずは仲介手数料が半額だった場合、無料だった場合は物件価格によってそれぞれどのくらい変わってくるのか見ていきましょう。
物件価格 | 仲介手数料3%+6万円
(税込) |
仲介手数料半額
(税込) |
仲介手数料無料 |
3000万円 | 105.6万円 | 49.5万円 | 0円 |
5000万円 | 171.6万円 | 82.5万円 | 0円 |
1億円 | 336.6万円 | 165万円 | 0円 |
物件価格が1億円の場合は実に336万6000円もの諸費用が節約できることになります。これは大きなメリットです。
大手不動産会社が仲介手数料を無料に出来ない理由
三井・住友・野村・東急といった大手不動産会社は仲介手数料を無料にしておりません。これから先も無料にする可能性は極めて低いです。無料どころか値引きすることもあまりないと思われます。
なぜなら、大手不動産会社は下記のような多額のコストがかかっているからです。
①広告費~イメージが大事!
・テレビCM費用(これはかなり大きいです)
・SUUMO等の媒体広告費
・自社ホームページとバナー広告費
・新聞折込広告、ポスティングチラシの費用
・オープンルーム(のぼり旗やポスター等)費用
・ステージング費用(空室の物件に家具を置いて生活をイメージできるようにする)
・プロのカメラマンによる物件撮影費
②人件費~営業マン以外にも社員がたくさん!
・各店舗に配属されている事務員さん
・各営業所に8~10人位いる営業マン、営業所長
・本部にいる総務・人事・経理などのスタッフ
・社内弁護士、税理士等専門家
③ランニングコスト~毎月たくさんの費用が!
・ほとんどが駅前にある店舗の家賃
・通信費用(インターネット、各営業マンのスマホ代、店舗のフリーダイヤル)
・案内の際に使う車のリース代
・車を停めておく駐車場代
ざっと見てもこれだけのコストがかかっており、それは営業マンが稼いでくる仲介手数料からすべて支払われているのです。そこで安易に仲介手数料を値引きしてしまっては、黒字を保つことができなくなります。
逆に大手ではない不動産会社においては、ここまでのコストがかかっていないため、仲介手数料を値引きすることが可能になるわけです。
それでは仲介手数料無料の不動産会社はメリットばかりなのでしょうか?大手との違いを見ていきましょう。
仲介手数料無料の不動産会社って?~主な特徴
では、大手不動産仲介会社と仲介手数料無料の不動産会社では何が違うのか見ていきましょう。(※全ての会社が当てはまるわけではありません)
車で案内しない
仲介手数料無料の不動産会社は、社用車を持たないため、物件の現地集合・現地解散の場合が多いです。(一部、タクシーで案内するところもあるようです。)
公共の交通機関を使って物件にアクセスする方法を試したり、駅前の雰囲気を味わうことも物件購入の際には大切なので、現地集合のほうが好きという方もいらっしゃいますが、小さなお子様連れの方や、たくさん歩けないご高齢の方には不向きです。
私個人としましては、不動産の営業マンが運転しながら物件の説明や街の説明をするのは大変なので(注意力散漫にもなりますし)、大手の不動産会社もタクシー会社と提携して、通常料金よりも割引して案内時にタクシーを利用できるシステムにしてはどうかと思います。
立ち上げたばかりの会社が多い
一つの目安としましては、宅建免許番号により起業して何年くらい経っているのか知る方法があります。
会社ホームページや物件の販売図面、折込チラシには必ず宅建免許番号を明示しなければならないルールがあります。
■複数の都道府県に事務所がある場合
国土交通大臣免許(1)第〇〇〇〇〇〇号
■1つの都道府県内に事務所がある場合
東京都知事免許(1)第〇〇〇〇〇〇号
この(1)の部分は免許の更新回数とともに増えていきます。すなわち(1)の場合は立ち上げてまもない会社ということになります。
これは本当に会社によりけりですが、ベンチャー的に立ち上げた会社の場合、正直なところすぐに倒産するリスクもあります。国際社会においては起業意識が薄いとされる日本でさえも、毎年たくさんの起業があり、逆に消えていく会社もあるわけです。
中には最初から倒産させるのを前提に起業している場合もあります(これはほんの一部だと思いますが)。何か心配事がある場合には都庁のしかるべき窓口に相談してみましょう。
東京都住宅政策本部
売却依頼を受けている物件が少ない
先ほど大手不動産会社がテレビCM等多額の広告費を掛けていることをお伝えしましたが、イメージ戦略の最大の効果は安心感と認知度です。これはボディブローのように効いて、必然的に売却を依頼するお客様も多くなります。
うちの子どもでさえも「東急リバブル~」と歌ったり、「SUUMOは物件数がナンバーワンなんだよ」とかCMの真似をしたりします(笑)
しかしながら多額の広告費を掛けない大手以外の不動産会社は認知度が低く、インターネット広告を駆使しても大手のようには売却依頼が集まりません。特にお客様はご自分の大切な資産を売却しようとする時には、どうしても安心感のある大手に依頼しがちです。購入顧客ほどには売却顧客は集まらないことが多いのです。
案内出来ない物件がある(ここが一番重要!!)
売却顧客が集まらないと、どうするか。大手不動産会社が売却依頼を受けている物件を自社のお客様に紹介することになります。
具体的にはこの図のようにレインズに登録された物件を検索してお客様にご紹介します。
ところが日々激しい争奪戦が行われている不動産業界において、昨今では主に大手不動産会社による物件の囲い込みが見られるようになってきました。物件の囲い込みとは、何かと理由をつけて自社のお客様にしか物件を紹介しないことです。囲い込みは売主から直接売却の依頼を受けている元付の会社が行ないます。
例えば、下記のような2社があります。
「大手A社(仲介手数料3%+6万円)」「立ち上げたばかりのB社(仲介手数料半額)」
2社のやり取りはこんなふうです。
B社「レインズに掲載されている御社の〇〇マンションを4/15にご案内したいのですが」
A社「〇〇マンションは売主様が荷物を片付けてから内覧開始したいというご意向のため、5/1からご案内可能となります。」
そのように言われるとB社は内覧開始となる5/1を待つしかありません。ところが実際にはA社が自社のお客様だけ5/1より前にご案内してお申込みをゲットしてしまいます。
5/1にB社が再度問い合わせた時には「もうお申込みが入って契約予定になりましたのでご案内出来ません。」と断られるわけです。
つまり、B社は自社のお客様を大手A社の物件にご案内したくてもご案内できないことになります。
さらに言うと、A社は自社のお客様に先に紹介する際に「こちらの〇〇マンションはレインズに掲載しただけで既に各社からたくさんお問い合わせがきてます。5/1に一般公開したらすぐに決まっちゃいますよ。今回特別にうちのお客様だけ先に内覧出来ますので、今のうちに内覧してお申込みしたほうがいいですよ。」というトークを使います。B社の問い合わせがタタキ台として使われてしまうのです。
そんなこと言われたら人間の心理としては「急いで内覧して申し込まなくては他の人に取られちゃう!」という気持ちになりますよね。
このような物件の囲い込みが日々行なわれるようになってきたため、大手以外の不動産会社、正確には元付ではない不動産会社ではご案内出来ない物件が出てきてしまいました。元付というのは売主から直接売却を依頼されている会社という意味です。仲介手数料を節約しようと思って仲介手数料の安い不動産会社に問い合わせたところ、結果的にそこは元付ではないため希望の物件が購入出来なかったということが生じてしまいます。それであれば仲介手数料3%+6万円支払っても最初から元付の不動産会社に問い合わせしたほうが確実というわけです。
人気のあるマンションであればあるほどそのような可能性が高くなるので注意しましょう。
最後に一点、注意点としては、大手不動産会社であっても元付ではない場合があるので気をつけましょう。一番良いのは「この物件は御社の専任媒介の物件ですか?」もしくは「売主さんから直接売却を依頼されていますか?」と聞くことです。「うちの専任ではありません。」とか「別の会社が売却を依頼されている物件です。」と回答された場合は元付ではないので物件の囲い込みに合う可能性はあります。注意してください。
コメント